緑内障
緑内障は、眼圧の影響で視神経がダメージを受け、視野が狭くなる病気です。初期段階では自覚症状がなく、自覚するころにはかなり進行した視野障害となっていることもあるため、早期発見と定期的な検査が重要となります。眼圧というのは、毛様体上皮で産生される房水(眼の中を循環して栄養を供給する水)量と、隅角(角膜と虹彩が交わる部分)から流出する房水量のバランスで決まります。隅角が十分に広い場合を「開放隅角」といい、逆に狭くて房水の流出が障害され得る場合を「閉塞隅角」といいます。
緑内障の種類
①よく見られるタイプの緑内障/開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障
隅角は開放していますが、房水が流出する部位の抵抗が増大しているため眼圧が上がり慢性的に視野障害が進行します。科学的根拠のある治療は眼圧(正常値:10~21mmHg)を下げることです。目標眼圧は状況によってゴールが動きます。一般には、もとの眼圧より20%減が目標となります。多数の人と同じ眼圧15〜16mmHg、より低い12mmHgを目標とすることもあります。主に視野欠損の状態やその進行スピードを考慮して判断しますが、年齢、角膜厚、家族歴など他の要因も考える必要があります。眼圧が低値でも視野の進行が著しい時は入院検査をして頂くことがあります。多くは点眼薬や選択的レーザー線維柱帯形成術SLT(当院に設置)で治療していきますが、効果不十分な場合は緑内障手術が必要になることがあります。
②発作タイプの緑内障/原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭くなり眼圧が上昇します。急速に隅角が閉じることで劇的に眼圧が上昇することがあり、これを急性緑内障発作と呼びいます。頭痛、眼痛、霧視を自覚し、治療は急を要します。点滴、内服、点眼で眼圧を下げ、レーザー虹彩切開術や白内障手術などの治療が必要になります。
③他に特殊な病型として、落屑緑内障 、ポスナー・シュロスマン症候群、続発性緑内障があります。
レーザー治療
・SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
眼内を流れている房水が眼外に流出する出口である線維柱帯に低エネルギ一のレーザーを照射します。線維柱体の機能が改善することにより、眼内から眼外へ流出する房水の量が増え、眼圧下降が期待できます。この治療は痛みがほとんどなく、短時間で終了し、術後の行動制限もありません。SLTの眼圧下降は点眼剤1成分程度の効果といわれていますが、治療をしても眼圧が下がらないことも3割程度あります。点眼薬での治療がうまくいかない場合や、点眼薬の副作用が気になる場合に選択されることが多いです。また、最近では緑内障の早期段階でSLTを用いることで、眼圧のコントロールがより効果的に得られることが注目されています。
手術治療
緑内障手術では、近年初期から中期の緑内障に対しMIGSと呼ばれる小切開で目に負担の少ない手術が注目を集めています。MIGSは白内障手術と同時に行われることが多くiStentを使用した眼内ドレーン挿入術、マイクロフックによる線維柱体切開術などがあります。効果には個人差があり眼圧を下げる効果は強くはないですが、比較的安全性が高く、今ある眼圧を少しでも下げることで長期的な視野障害の進行を遅らせる可能性が期待できます。
他にも、緑内障手術には360度線維柱体切開術や、より眼圧を大幅に下げる効果がある線維柱帯切除術、インプラント手術などがあります。これらの手術は入院が必要で、眼の状態に応じて必要な際には北海道大学病院や時計台記念病院などの連携先の病院へ適切にご紹介いたします。
・iStent(水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術)
房水の主流出路である線維柱帯にチタン性の眼内ドレーン(iStent inject🄬)を挿入することで、房水の排出循環を改善させ、眼圧を低下、安定化させることが期待できます。術後出血で数日霞んでみえます。白内障手術と同時手術のみとなります。
・マイクロフックトラベクロトミー(線維柱体切開術 眼内法)
角膜の小さな傷からフックを眼内に挿入し線維柱体を切開することで房水の流出抵抗を改善させ眼圧を下げます。術後1~2週間ほどは必ず前房出血が起きるため、一時的に見えにくくなります。また、出血で房水の出口が目詰まりを起こして一過性に眼圧の上昇も起こるので適宜点眼や内服で調整を行いながら経過観察します。白内障手術との相性がよく、同時に行われることが多いです。